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日本の伝統、畳をデザインする

2012年10月11日

日本の伝統、畳をデザインする

この写真、何だか分かりますか?  くるんと丸めた畳を何本も繋ぎ合わせた、ちょっと不思議な形状。い草で織られた畳表を丸め、それをつなげてシート状にした「いぐさロール」です。見たことがあるようでない、そんな新しさのある「いぐさロール」のベンチを造形したのは、デザイナーの尾形 航さん。触れてみると、い草の良い香りと程よい弾力に、ほっと癒されます。  近年はフローリングが主流となり家庭で見る事は少なくなってきたものの、座敷に家族が集い食卓を囲む、そんな日本の原風景には欠かせない畳。実は市場に出ているものの中で国産の畳が20%以下にすぎない事をご存知ですか?し烈な価格競争が続き、適正価格で売られていない現状を、ほとんどの人は知りません。そして今、畳の原料である「い草」を生産している農家が激減しています。  そんな現状を打破したいという山形のある畳屋さんと、伝統工芸の一種のような美しさに触れ、「畳を今までと違う『新しい物』として人の目にうつるものを創りたい」と考えた尾形さんの出会いから、この作品は生まれました。

畳に新しさをもたらす『い草ロール』とは?

「畳をデザインしたい」という尾形さんが偶然出会ったのが、山形県にある(有)鏡畳店、鏡社長。国産の畳業界を盛り上げたいという鏡社長の想いも重なり完成した作品について、伺った。

一つの目的のために、極限までブラッシュアップされた物は美しい。

備前長船刀剣博物館(備前おさふね 刀剣の里)

 

 

写真/備前長船刀剣博物館(備前おさふね 刀剣の里)

大学でデザインを学んでいたんですが、その卒業制作で畳に興味を持ったのがきっかけで、それまで畳の作られ方も知りませんでした。そんな時、山形の『鏡畳店』さんをHPで見たんです。鏡社長は「畳屋道場」という、畳屋が直接い草農家へ研修に行くことができるネットワークを作っていて、熊本県の八代での農業体験に連れて行ってもらうことができました。

い草の収穫は朝の3時から始まり、刈った後は「泥染め」という工程を経て乾燥させるんですが、一番最後の選別で、約1m未満のい草は一畳に満たないため、廃棄してしまうんです。大体10~15%ぐらいが、ただ短いだけで捨てられているのがすごくもったいないと思って。だからこの「いぐさロール」には短いい草を使っています。でも外側に使っている畳は、良い畳に触れるきっかけになってほしいので、最高の国産畳を使っています。畳という物は「敷いて使う」という使用目的のためだけに極限までブラッシュアップされた物。それを手で触れて試行錯誤していく中で、「平らであること」が一番大事な畳を、丸めてみたら逆に面白いんじゃないかと思って。そうやって生まれたのが「いぐさロール」です。

いぐさロールを短く、一人分の大きさにした座布団。ここち良い指圧感と和モダンな見た目が、フローリングに良く映える。

 

 

いぐさロールを短く、一人分の大きさにした座布団。ここち良い指圧感と和モダンな見た目が、フローリングに良く映える。

何気なく触れているだけで落ち着く、 畳表を使った手提げ。

 

 

何気なく触れているだけで落ち着く、 畳表を使った手提げ。

この作品がきっかけになって、国産の畳と、い草を生産している農家さんの現状に、多くの人が目を向けてくれたら、というのが目的の一つです。農薬に気を使い安全性と品質をひたむきに守ってきた、そういうい草農家さんの作る日本の畳表は、吸湿性に優れていて、香りにはリラックス効果があります。裏返せば10年以上はもつし、使えば使うほどつやがでてくる。何より触れていてすごく気持ちの良いもの。今、畳は日本人よりも外国の人にとてもウケが良く、迎賓館や料亭やお城など、外国人がイメージする日本を体現する物として使用されることが多くなってます。日本の伝統技術として世界に誇れる物だと思っているので、現在海外へも発信し始めています。

い草を育て、刈り取り、泥染めをして乾燥させ、織り込んでいく。それが一枚の畳表となる工程は、畳が工業製品ではなく農作物である事に気づかせてくれる。日本の伝統文化を途絶えさせない― その情熱が形となり様々な場所で見られる日も、遠くないかもしれない。

尾形 航さん

尾形 航さん

東北芸術工科大学卒。プロダクトデザインを学び、卒業制作の一環で畳を使った製品を、鏡畳店と共同で開発。博物館や図書館・建築事務所や神奈川県では昭和音大でも使用されている「いぐさロール」のベンチをはじめ、今後も畳の良さが伝わる製品を開発していく予定だという。

海老名畳店

横浜市中区本郷町3-67
045-621-8205

海老名畳店 『畳屋道場』(全国畳店ネットワーク)に加盟。関東地方の公共施設等でモニタリングとして「いぐさロール」を設置することにも協力している。生産者と密な連携をとり、国産の畳表を届けている。

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畳屋道場とは?

その名の通り、畳屋を鍛える道場です。

畳屋道場畳屋道場

平成元年に約5800軒あった「い草農家」は、平成24年現在で約600軒にまで減りました。安価な中国産に押され、本当に良い畳表を作る日本のい草農家が減り続ける現状を打破しようと、畳屋同士がネットワークを作り、畳職人が産地を訪れ実際に農作業し、生産者との密な関係を作り上げる事で本当に良い畳をお客様に届けていく-それが『畳屋道場』の取り組みです。現在、新聞やTVなど各種メディアで取り上げられ、注目されています。 畳屋道場HP
http://www.tatamiyadojo.com/

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